欲望から解放されて自足すること、動じない心を持つことが重要だと考えた。そのため肉体的・精神的な鍛錬を重んじた。
知識や教養を無用のものとし、音楽・天文学・論理学をさげすんだ。プラトンのイデア論に反対し、「僕には『机そのもの』というのは見えないね」と言った。プラトンは「それは君に見る目がないからだ」と言い返した。プラトンは、ディオゲネスはどういう人かと聞かれて「狂ったソクラテスだ」と評した。運動の不可能(おそらくゼノンのパラドックス)を論じている哲学者の前で、歩き回ってその論のおかしいことを示した。
唯一の正しい政府は世界政府であるといい、「自分はコスモポリタンだ」と言い、史上初めてコスモポリタニズムという語を作った。また女性や子供の共有を主張した。
彼には二十ほどの著作があったという説があるが、一方でまったく本は書かなかったとの説もある。モニモス、クラテスなどの多数の弟子を育てた。
ディオゲネスは現在、その思想よりも逸話によって知られる。
外見にまったく無頓着だった。住むところも気にせず、神殿や倉庫で寝て「アテナイ人は自分のために住処を作ってくれる」と言った。あるときは酒樽(大甕)に住んだ。
広場で物を食べているところを人が見て「まるで犬だ」と罵られたので、「人が物を食っているときに集まってくるお前たちこそ犬じゃないか」と言い返した。食べるのがおかしなことでなければ、どこで食べてもおかしなことではないと主張した。
同様に、道ばたで公然と自慰をした。「擦るだけで満足できて、しかも金もかからない。こんなに良いことは他にない。」 「食欲もこんなふうに簡単に満たされたらよいのに」と言った。
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オリンピアで優勝した闘技士が美しい女を振り返るのを見て「偉大な闘技士が小娘に首をねじ上げられているよ」とからかった。
ある人がディオゲネスに物を贈った。人々がその行為を褒めるとディオゲネスは「もらう価値のある俺も褒めてくれ」と言った。
ある人がサモトラケ島の神殿に感謝の奉納が多いと感心していると「救われなかった人が奉納していたらもっと多かっただろうね」と言った。
他にも数え切れないほどの逸話があるが、これらの多くはおそらく、日本の一休噺のように、ディオゲネスに仮託して作られた小話であろう。日中にランプをともして「何をしているのだ」と聞かれたとき「人間を探しているのだ」と答えたという逸話もある。ますます一休さんのようである。
ギリシアの人たちは、ディオゲネスを笑う一方で彼を愛した。ある男によって彼が住居にしている甕が割られたとき、別の甕が与えられたという。