テセウスのパラドックスの例となるようなことは幾らでも思いつくことができる。例えば、建築物や自動車で全部品を置換しても、見方によってはアイデンティティーは保たれているとされる。企業や大学も建物や所在地を変えたとき、建築物は全く別になるが、その目的や人々は同じ組織としての機能を保つ。2つの企業が合併したとき、アイデンティティーも統合される。同様に人体も常に細胞が入れ替わっている。成人の人体では、細胞の平均寿命は10年以下とされている。
アイデンティティーを行動や現象と関係付けるとすれば、アイデンティティーはさらに把握するのが難しくなる。個人のアイデンティティーの捉え方によって、例えばハリケーン「エヴァン」がある地点で消滅した直後に、ごく近い場所に(別の)ハリケーンが発生した場合、それを「エヴァン」が復活したと見るか、あるいは別のハリケーン「フランク」なり「ジョージア」なりが発生したと見るかが決まってくる。
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アリストテレスの哲学体系では、事象の原因を4つに分け(四原因説)、これらを分析することでパラドックスに答えることができるとされる。アリストテレスによれば、ある事象が「何であるか」は「形相因」であり、その観点では設計などの本質が変わっていないため、テセウスの船は「同じ」であるとされる。同様にヘラクレイトスの川も「形相因」的には変わっていないが、「質料因」が時と共に変化しているとされる。